アズマックス 挑戦の歴史
「冷間引抜き」の加工技術を通じて、幅広い加工ニーズに応えてきたアズマックス。業界や製品分野は問わず、昨日まで「難しい」と思われてきた製品づくりにも、果敢に挑み続けてきました。その挑戦の歴史をご紹介します。
「冷間引抜き」の加工技術を通じて、幅広い加工ニーズに応えてきたアズマックス。業界や製品分野は問わず、昨日まで「難しい」と思われてきた製品づくりにも、果敢に挑み続けてきました。その挑戦の歴史をご紹介します。
成功に向け試行錯誤を続ける、不屈の精神
数ある異形品の中でも、特にアズマックスが得意とする1つが、「軌道軸」。さまざまな機械のスムーズな動作を支える部品であり、その長さのある形状から、金属を伸ばす引抜き加工との相性も良い。アズマックスがつくる軌道軸は、工作機械や医療機器、駅のホームドアなど、社会のあらゆる場所で活躍している。
──しかし、ある日寄せられた軌道軸の依頼は、従来のそれとは全く異なるものだった。その軌道軸が組み込まれるのは、半導体の製造装置。
正確無比な動作が求められる半導体の組み立て作業において、ロボットアームを稼働させる「アクチュエーター」に用いられる製品だった。
図面を見た設計技術者が、まず驚いたのはその軌道軸の形状。断面には、角度のある深い溝が入っており、加工に苦労することは一目でわかった。引抜き加工は、金属を「ダイス」と呼ばれる金型に通すことで望みの形状にする製法。断面に深い“溝”があるということは、その分ダイスには“突起”が生まれることになる。突起が長く、角度がつくほど、加工途中にその部分が割れるリスクが高まるのだ。
ここまで深く、そして角度のある溝がある製品は、多くの異形品を生んできたアズマックスでもなかなか目にするものではない。顧客は、長年アズマックスと取引を続ける産業用ロボットメーカー。引抜き加工について熟知しており、難形状であることも理解した上での依頼だ。それでも、「アズマックスなら」と期待を寄せてくれている。長年引抜き加工の技術を磨いてきた自分たちが、その期待に応えないわけにはいかない。
「挑戦しない」という選択肢を口にする社員は、1人もいなかった。
早速工場では、各工程の担当者でチームを組み、作戦会議を行なう。
難形状だからと言って、引抜きの回数を増やすとその分コストは増大してしまう。製造コストも考慮しつつ、最大限に効率化した工程設計を行なった。
──そうして迎えた、引抜き当日。工場内では社員が固唾を飲んでその様子を見守る。しかしその期待もむなしく、工場内にダイスが割れた金属音が響く。初回で引抜きができたのは、製品の全長約7~8mのうち、わずか“5mm”。これから数十本もの製品を引抜く必要があるにも関わらず、1本目での失敗。これには社員からも落胆の声が漏れる。
5mmでのダイス破損。しかしその結果が、かえって社員たちの挑戦心に火をつけた。引抜き加工の可能性を、ここで諦める訳にはいかない。
執念にも似た感情で、わずか5mmの失敗から原因解明を行なう。大ベテランから過去の似たケースについて話を聞き、事務所では何度も入念にシミュレーションを行なう。解析結果と加工の不整合の要因を1つ1つ潰していく。各自が失敗の理由を考え、意見を持ち寄り、話し合い、検証を行なう──。
そんな地道な作業が、数えきれないほど繰り返された。
何度もトライアルアンドエラーを重ね、やがて成功の時は訪れた。
シミュレーションで幾度となく目にした形状の鋼が、ダイスから引抜かれ、その姿を現す。初めての引抜き成功。工場内には歓声というよりも、安堵に近い声が漏れる。それは全員が、失敗の恐怖とも戦い、本気で案件に向き合ってきたことの証明だった。アズマックスには、日々“前例のない依頼”も多数寄せられる。複雑な形状や、加工が難しい鋼種、高い品質基準…。それに対して「できない」と口にするのは簡単だ。
ただ、そんな困難に対して果敢に挑み、成功させることができれば、この世界のモノづくりの可能性は、無限に広がっていく。飽くなき鋼への挑戦。それこそがアズマックスの原点なのだ。